The Long and Winding Road、ふとビートルズのこの曲を聴いて、
何故かはるか(ﾟдﾟ)(｡_｡)ｳﾝ十年昔の大学1年生の夏休みのバイトを思い出してしまった。

妙齢の美大生の私が、友達2人と夏のアルバイトに南佐久のレタス農家へ行くことになった。
美大のデザイン科というのはまあ、力仕事とは普通は縁遠いのだが、
「学生の内は力仕事をせよ。」と教授がみんなに話された事に納得。
且つ、
近くが第二の軽井沢と言われた清里という事で、ナンパな思考もあって、３０日間の住み込みとなった次第です。

しかし、そのような甘い素敵なアバンチュールの夢想はすぐに飛散。
仲間３人一緒と思いきや、なぜか私だけ二人とは離れた農家へ。とほほ

それにしてもホント農家の方はすごい。
仕事柄、農産物の経済情報収集力とその判断と対応の速さもビックリ(*_*;
また労働量も当時の何もわからない初バイトの私から見るとすごかった。
朝６時過ぎには家を出て１８時まで、休憩当然ありですが、一日中畑でお仕事です。
レタスや白菜の箱詰めを畝から土手のトラックに運ぶ。いたって単純な作業ですが、
１５キロのレタスと白菜（３０キロ）の箱を持って、何度も畝とトラックの往復はきついですよ。
はじめは１箱と持とうとすると、
「あれ、それじゃいつまでも片付かないよ」
という訳で左右に１箱づつ白菜だと６０キロを待って移動です。
持ち方にはコツがあるのですが、都会の青年には、まったく体が出来てませんから初めは毎日が辛いこと。
2日目の朝、手の指が疲労で動かない！
終わった後は笑えますが、当時は朝のおトイレに月間カレンダーが貼ってあり、
終わった日まで毎日、心の中で日にちにペケを入れ、後何日だ。
と言い聞かせてたものです。

実際、私の前に来た都会のアルバイトの男の子は、バイトから2日か3日目の朝、ここのおばさんが朝見に来たらきれいに布団を片していなかったそうです。
数日後、その子は母親に連れられて詫びに訪れたとか。
まあ、ちょっと過保護なのではと思いつつも、
（うーん、そう言われると逃げ出せんではないか。先手を打たれた・・・）
と心の中で腕組みです。

そもそもアルバイトの動機は、「清里」では無く、ステレオプレイヤーとワーグナーの楽劇のLPを購入する事だったのです。
当時、フランシス・コッポラの「地獄の黙示録」という映画が流行っており、その中でワーグナーの楽曲が使用されていたのを聴いたのが始まりでした。
私の大学の専攻が「オペラの舞台美術」でしたからね。
今もそうですが、当時は特に学生ですからお金を稼ぐというのがホント大変という事がしみじみわかりました。

途中、なれない仕事と一人住み込みの緊張からか、風邪を引き、おなかを壊しましたが1日休んだだけでこなしました。
不思議と人間というものは環境への順応力と言いますか、体力が備わってくると言いますか、15日くらいから体の苦がなくなり、それと同じくして心の負荷も消えていきました。
おばさん、おじさん、おばあちゃん。いとこのおばさん。とっても親切で良い人達です。
鯉こくはちょっと勘弁ですけど。

もうすぐバイト期間が終わるころ、レタス畑でおばさんがふと寂しそうに
「もうすぐだねぇ。」と語り掛けてくれました。
「でも、次にくるバイトの人はもっと働ける人かもしれませんよ」
「そうかもしれないけど、やっぱり気心を知れた人の方がいいし、また、一から教えないといけないからねぇ。」
バイトしてよかったな。と思えたのはその時でした。
数日後に農作物を手にいっぱい持って、私は家に帰ってきました。懐には、初めて自分で稼いだお金を持って。

って、ビートルズもThe Long and Winding Roadも関係ないか